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作:ダ・メガネさん「甘いのはチョコか里香か?」

バレンタイン企画に投稿して頂いたSSです。
「よし、来たぞ。ついにこの日が来たんだ!」
僕は自分の部屋の時計を見ながら呟いた。2月13日午前0時いや、今日から2月14日すなわちバレンタインデーになったわけである。
正直、何度この日を待ち侘びた事だろう・・・考えてみれば、去年のままの僕ならこの日をこうまで望みはしなかっただろうが、今年は違った。
何故なら、僕には里香がいる!!
性格は本当に悪いし、いじっぱりだけど笑うとすごく可愛い僕の自慢の彼女が・・・バレンタインデーの今日、僕達は一緒に出かける事にしていた。
つまり、デートである。
それだけでも僕は嬉しくてたまらないのに、里香が「その日はバレンタインデーだから、チョコあげるね。」なんて言うんだ。
これで落ち着けと言うのは不可能である。
「ふははは・・・・。」
思わず笑みが漏れながらも僕はベットの上で横になった。里香に会うには後10時間は待たなければならず、その間は耐えるしかない。
「はやく時間になってくれないかな~」
僕はそう切に願いながら、目を閉じた。






「ぬわぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~!!??」
僕は目を覚まし、時計を見て思わず叫んでしまった。
ベタかもしれないけど、完全に寝過ごしていた!!
里香とは午前10時に僕の学校の近くにある小さな公園で待ち合わせをしていたのに、今の時間は9時55分・・・どんなに急いでも20分はかかる。
完全にアウトだ。
遅刻すれば里香は怒るし、おそらくはチョコも白紙になってしまうに違いない。
「それだけはいやだ~!!」
僕は再び叫ぶと大急ぎで準備を始めた。



「・・・・・・・遅い。」
里香は1人で公園のベンチに座っていた。
ベンチに座っている白いワンピース姿の少女・・・それは本来ならとても可愛らしいというイメージが定着してるらしいが、その少女の顔はそのイメージを壊すには充分なくらいに怒っていた。
大の男でも今の彼女には近づかないだろう。
今日は裕一とのデート・・・裕一が私に告白してくれてから何回かデートをしたけど、その度にこの嬉しい気持ちを押さえるのに必死だった。
裕一の前では「暇つぶしに」とか「裕一が惨めでかわいそう」とか理由を適当につけてたけど、裕一と一緒にいられるのが嬉しかったし、今日も色々と準備をしてきた。なのに・・・・裕一は来ていない。
待ち合わせは10時のはずが、すでに10分過ぎていた。
「普通なら裕一が先に来て、私を待つはずでしょう!!」
私は思わず、誰もいない公園で叫んでいた。
私なんて1時間も前に来てたのに・・・。
裕一、私を怒らせた罪は重いわよ。


「里香ごめん!つい寝過ごして・・・」
僕はそっから先の言葉が言い出せなかった。何故なら里香が僕を睨んでるからだ。
今までずっと里香を怒らせた僕だからわかる。
今の里香の怒りLVは最高クラスで、不機嫌オーラさえ見えていた。
「いや、忘れていたじゃないんだ。だから帰らないでくれ」
そう言うと僕はすぐに里香の近くで土下座した。
情けないと言われても構わないが、このままデートが中止になるのは嫌だった。
里香に許しを請うには何と言われようが、謝りぬくしかなかった。だが、予想に反し里香は何も言わなかったので、僕は焦り始めた。
里香が僕を罵らないなんて・・・まさか、言葉では言い表せないほどに怒ってるって事か?
だとしたらどうすればいいんだ・・・。
そんな事を頭の中で考えてると里香が突然立ち上がり、僕が全く予想してない事を言ってきた。
「裕一、もういいから顔を上げて。」
・・・嘘だろ?里香が許してくれたのか?
てっきりこのまま帰られるか、罵られるかのどちらかだと思ってたのに・・・。
だが、許してくれると言ったんだったらそれでいいじゃないか。このまま続けて帰るなんて言われたらそれこそ本末転倒ってものだ。
僕はゆっくりと顔を上げ・・・られなかった。
里香が中身の入ったジュースの缶を僕の顔に目掛けてぶつけたためである。
よく考えれば、里香がこうもあっさり許してくれれば僕も苦労はしてないというのを忘れていた。
考えが甘かったよ。
「いっつぅ~」
痛がってる僕を里香はさっきとは全く違う満面の笑みをうかべていた。
「どう思い知った? こんな可愛い女の子を待たせるなんて・・・本来なら裕一なんかに私はもったいないの分かる?」
「うぁい」
僕はまた痛みが残ってる鼻の辺りを押さえながら答えた。確かにそれは自分でもそう思う。
僕なんかには里香は本当にもったいないし、夏目なんかにも言われた事がある。
「でも、このまま裕一に彼女ができなければ、裕一が他のいたいけな女の子を毒牙にかけちゃうおそれがあるからね。だから仕方なく私が犠牲になったの」
泣き崩れる真似をしながら、そう語る里香に僕は思わず反応した。
「毒牙って・・・僕はそこまでー」
「入院してた時にベットの下にあんないやらしい本をあれだけ隠して、自分の部屋にも結構な量を隠してたのは裕一だったよね?」
「ごめんなさい」
そう言われると反論できず、僕はまた土下座をして謝った。
僕が里香の家へ行ったように里香も僕の家に2・3回ほど来てくれて、その際に本物のコレクションがばれてしまったのである。入院時のは亜希子さんに証人になってもらい、多田コレクションと説明はしたが、さすがに自分の部屋にあったのは言い訳できず、ビンタを2発もらいあの時以上に酷い目にあわされた。
「もういいわ。でも、今度遅れたら問答無用で家に帰るからね」
「ああ、わかったよ」
まだ少し怒りながら言う里香に僕は頷いた。
「全く・・・私は1時間も前に来て楽しみにしてたのに・・・・。」
「え? 今なんて・・・」
「な、なんでもないわよ!!」
顔を赤くして、早足で里香は歩き出していく。
そんな里香を見ながら、僕は思わず笑いが止まらなかった。里香も何だかんだ言って、僕と同じ気持ちだったという事が嬉しくて、僕は顔の笑みを押さえながら里香を追いかけた。


僕と里香はその後一緒に歩きながら雑談をして、駅前にむかった。
駅の近くに新しい書店ができたので、見てみたいと里香が頼んだので、まずはその書店へ行った。
その書店は思ってたよりも大きくて、文房具とかも多く売っている立派な書店だった。
里香は書店に着くと文学コーナーへ向かい、本を探し始めた。
「夏目漱石に森鴎外、宮沢賢治に島村藤村・・・すごい予想よりも品ぞろえがいい」
里香の目は本当に生き生きとして本を選んでいた。
その一方で僕はまた里香に勧められて読むと思われる本ができるだけ薄くて、わかりやすいのである事を願うばかりである。しばらく待つと里香が近づいて来て、両手には7冊くらいの本(しかも厚い)があった。
何か嫌な予感が・・・・
「裕一、デートだから当然男性が女性にそれなりの敬意を現してくれるよね?」
里香がにっこりと笑顔でそう言った。
どうやら予感が当たったらしい。さようなら、僕の小遣い・・・・。
「おごらせてもらいます」
僕は涙を飲んでそういった。
他人から見れば、僕は少し泣いてると思われたかもしれない。だが、僕は泣いてない。
きっとこの店が雨漏りをしてて、その水が僕の目の辺りに落ちたに違いない。そう言い聞かせた。
金額はさいわいな事に万単位はいかなかったけど、僕の持ってる金額の90%強を失った。
来月までどうしよう・・・。



購入した本全てを僕が持って僕達は書店を後にし、再び歩き出した。
その後洋服屋などをあちこちと周っているうちに夕方になりかけてきたので、僕達は里香の家へと向かった。
なんとか里香の家まで着き、里香の部屋まで本を持ってきた時には僕の体力はほとんど使い切っていた。
よく途中でへばらなかったと自分をほめてやりたいが、そんな僕を里香は「体力がない」や「情けない」といつものように罵ってくる。
「あのさ、裕一も男の子なんだからもっと体力があるはずでしょう?」
「そうは言うけど、こんな厚い本を何冊も持って歩けば疲れるさ」
実際、里香が買った本はどれもが分厚いのばかりだったし、裕一も本を持って歩いてた訳だからある意味疲れて当然とも言えた。
「だいたい何の本を買ったんだ?」
「ええっとね~まず、太宰治の斜陽に樋口一葉のたけくらべでしょう。あと世界文学ではドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟に貧しき人々・・・」
「ごめん、もういいから」
次々と本のタイトルを言う里香を僕はなんとかストップさせた。
「本当にあそこは良い本ばかりだったから、今度からチェックしておかなきゃ」
嬉しそうに話す里香を見ながら、僕もこれからあそこには里香のために何度も行く羽目になるんだろうなと考えていた。また苦労しそうだ・・・。
「今日は本当に頑張ってくれたし、楽しかったから・・・これあげるね」
里香はそう言うと僕に赤い包み紙にラッピングされた小さい箱をくれた。
これはまさか!?
この状況からすれば間違いない。僕の胸が高まるのが分かる。
「買ったので悪いけど、バレンタインデーだからうけとって」
僕はさっそく開けて見るとハート型のチョコが箱の真ん中に入っていた。
「ありがとう里香。本当に嬉しいよ」
「でもさ・・・・これ手作りじゃないから」
「そんなのいいさ。僕は里香がチョコをくれたってだけで本当に嬉しいんだ」
確かに手作りを期待してなかったと言えば、嘘になるだろう。でも、考えてみれば里香は今まで入院してたんだからチョコ以前に料理をするなんて事じたいまだ無理と言える。
だからこそ、チョコを買うしか選択肢はなかったんだ。
でも、僕には分かる。
「里香、分かってるからさ・・・ありがとう」
「・・・うん」
手作りじゃなくても里香が僕にチョコをくれたんだ。
こんなにも喜ばしい事があろうか!!
本当にありがとう里香。
僕は早速里香がくれたチョコを食べ始めた。
売ってるだけあって、なかなか良い味をしててあっという間に平らげてしまった。
「おいしかった?」
「ああ、とっても」
里香の問いに僕はそのまま答えたが、里香はそれを聞くと少し顔を沈めた。
作れなかった事を気にしてるんだろうか?
僕は里香の気持ちを分かってたと思ったけど、違ったのかな。
里香に聞こうと思い口を開こうとした時、先に里香が話し始めた。
「そっか。やっぱり作ったのを渡さないで、買ったのにして正解だったかな?」
・・・・・・え、今なんて?
僕は里香の言った事が一瞬わからなかった。
だが、そんな僕に気づかないのか里香は話を続けた。
「裕一。あのね・・・少し前からいろいろとやってみたけど、私って入院してて料理なんてやってなかったの・・・でも、頑張って作ってみたけど、できあがりにしても見た目は酷いし、味もよくなかった」
里香・・・。
「だからこんなの渡すくらいなら買った方がいいって思ったの・・・・ごめんね。裕一」
里香・・・僕のために里香がチョコを作ってくれていた、里香は僕なんかのためにこんなに考えてくれていたんだ。なのに、僕は!!
僕は急に里香がたまらなく愛しくなり、里香を抱きしめた。
抵抗するかと思ったが、里香はそのまま抱きしめられていた。そして、僕は里香にあるお願いをする事にした。
嫌がれるかもしれないし、断られるかもしれない。
でも、これだけは叶えてもらおう。
僕はそのお願いを里香に言った。
「里香、お前の作ったチョコ・・・まだあるなら欲しいんだけどくれない?」
里香は少しだけ黙ってると一言だけ言った。
「まずいよ?」
「いいよ。さっきもらったばかりで悪いけど、やっぱり里香の手作りを食べてみたいんだ。里香が僕のために作ってくれたんだから」
あ~何か自分で言ってて恥ずかしくなってきたなぁ・・・でも、これが僕の気持ちなんだ。
この気持ちに嘘偽りはない。
「・・・物好き」
里香は顔を赤くして僕にそう言った。
そして、僕から離れて自分の机の引出しの中に手を入れ、さっきとは違いラッピングのない白い箱を僕に渡した。
「里香。ありがとう」
「お腹壊しても知らないわよ」
「別に構わない」
僕は即答だった。
里香の思いがつまったチョコを食って、壊すんならそれでもいいとさえ思っていた。
「本当に物好き。じゃあそのかわりホワイトデーには10倍返しだからね」
10倍!?
3倍返しは聞いたことはあるが、10倍はないだろ。
だが、ここで反論すればチョコはもらえない。
なら、覚悟を決めるしかないだろう。
「わ・・・・分かった」
僕はなんとかそう答える事ができたが、今月に続いて、来月も辛くなるのはさすがに気落ちした。
でも、得られた物は大きい。


里香の手作りチョコは例えどんな大金を詰まれても渡さない。これは僕の物で僕だけに与えられた特権だ。
僕はさっきと同じように箱を開けてチョコを食べてみることにした。
箱の中には少し変形してるが丸いチョコが8つ入っていて、その中の1つを僕は早速食べてみた。
確かに里香の言うように苦かったけど、まずいとは思えなかった。むしろ料理初心者の里香にすれば上出来だと思う。
「どう? やっぱり苦いでしょう」
「うん。でも食べられない事ないし、本当においしいよ」
里香が不安げに聞いてきたので、僕はその不安を消すようにいったつもりだったが、里香はそれが気に入らなかったようだ。
「裕一は味オンチだったんだね。こんなのがおいしいなんて・・・」
「そんな事ないって。本当においしいさ」
そう言って僕はまた1つチョコを口に入れ、そのまま里香を抱きしめてキスをした。
里香も予想してなかったのか抵抗はなかったが、数秒もすると抵抗を始めてきた。
里香は僕から離れるといつものように罵ってきた。
「何するのよ。バカ!」
「証拠さ・・・おいしかったろ?」
僕がそう言うと里香は真っ赤になった。
「なんならもう1回・・・」
「絶対嫌!!」
僕の言葉を遮って、即答する。
うぅ・・・即答はないだろ。
思わず落ち込む僕に里香が近づいてきた。
「裕一、ありがとね」
里香は僕の前でそう言った。
僕は思わず顔を上げると里香が僕の唇にキスをした。




本当にありがとう。裕一
今年は失敗したけど、来年は頑張るから!!
その時はまた食べてくれるよね。
大好きだよ。裕一
私はキスをしながら、しばらくこうしていたいと心から思った。

            END

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