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作:ハンザイシャさん「ふたり(続き)」

「ん……」
 目を開けると、カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいた。そのおかげで、今が朝だというのが分かった。まだ視界がぼんやりとしているが、だんだんと意識ははっきりしてくる。昨日片腕に感じていた感触がない。つまり、隣に里香の姿がいないのに気付いて分けだ。
「あれ?」
 半身を起こして部屋を見渡すが、里香の姿はやはりどこにもない。昨日のことは夢だったんだろうか?いや、しかしここは里香の部屋だ。紛う事なき里香の部屋。小説でぎゅうぎゅうの本棚とか。他は……特に特徴のない部屋だってことしか……まあとにかく、ここは里香の家で里香の部屋だ。じゃあ、里香は?
 ベッドの上で一人混乱していると、部屋のドアが開き、里香が中に入ってきた。
「あ、おはよう裕一。朝ごはん、できたから」
 朝ごはん……確かに里香の姿は、昨日のようにエプロン姿だった。……THE!いやいや、なんでもない。つまり、僕よりも早く起きた里香は僕のために!(ここ重要)朝ごはんを作って、それができたから起こしにきたっていうわけだ。
「裕一?朝ごはん、食べないの?」
「へ?あ、食う。食うよ。ちょっと着替えるから下で待ってろ」
「うん、わかった」
 微笑みながら、里香はドアを閉めて階下へと降りていく。なにやら上機嫌だったが、何かいいことでもあったんだろうか?まあいいや。それより、さっさと里香の手料理が食べたい。

「ふう……」
裕一、やっぱり昨日は寝てたのよね。良かったような良くないような。てゆうか、本気で女の子を前にして眠るってどういうことなんだろう。ああ、本気で心配になってきたな。さっきまですっごく楽だったのに、何だか、胸の辺りがむかむかしてきた。もしかして、他に好きな子がいるとか?そういえば、今まで好きって言われたことないような……で、でも、あのキスはそういう意味じゃ……いや、ちょっと待とう。落ち着け、私。確かにキスって言うのは大事なことだ。とても、たぶん女の子にとっては大事なことだ。それが初めてともなると、何だか私にとってはすっごく大事なことのように思える。でも、外国を考えろ。アメリカとか、普通に挨拶でキスしてない?てゆうかしてるよね?あれ?じゃあ、あのキスは何?友達的な挨拶で?いや、でもさすがにそれは……ってちょっと待った!じゃああのチボー家の人々は何なのよ!命をかけて君の友達になるって変じゃない?いや、変!すっごい変!絶対あれはそのままの意味だってば!……じゃあ、なんで襲ってこないんだろう?いや、別に襲ってほしいんじゃなくて……ただ、ちょっと心配で……何がって……色々……
「……バカ裕一」
 数分で何だかだんだんとむかついてきた。何もかも裕一が悪い。こんなに私が悩むのも、こんなに私が辛いのも、全部裕一のせいだ。バカ。
朝ごはん、やっぱり抜きにしてやろうかな。

 着替えて階下に降りると、里香が一人で飯を食っていた。僕の分の飯は、用意されていない。
「あの、里香さん?」
「なに」
「オレの分は?」
「知らない。自分で用意しなさいよ」
「……」
 なぜだ?さっきまで上機嫌だったくせに、この数分の間に何があった?タンスの角に小指ぶつけたとか?……そんなバカみたいな理由じゃ里香は怒んないだろうしな。ちなみに今のは、僕がさっき着替えてるときに起こったことだ。いや、あれは痛いって。なんで人間って小指をぶつけるんだろうか?そこまで神経が働かないとか?って、そんなことはどうでもいいんだよ。
「里香、何かあったのか?」
「なんでもないっ!」
 いいながら、里香は茶碗をテーブルに思いっきりぶつけた。茶碗が割れなかったのが奇跡だ。
「おい、なんだよ」
「だから、なんでもないっていってるでしょ?さっさとご飯食べちゃってよ。片付けないといけないんだから」
 さっきまでTHE新婚!とか思ってたのに……今じゃ離婚間近の夫婦だよ。冷め切ってるよ。理由は何だ?僕が浮気でもしたのか?いや、そんなことは断じてしてないぞ。じゃあ何だ?里香に好きなやつができたとか?いやいや、そんなことありえるはずが……何を考えてるんだ、僕は。仮想の世界の出来事を考えたって何にもならないだろう。
「なあ、なんで怒ってんだよ?」
「うるさいっ!」
「意味わかんねえって。オレ何かしたのか?」
「したわよ!」
「なにを!」
「それは……その……逆に何もしてこないっていうかその……とにかく!裕一が悪い!」
「はあ?本気で分けわかんねえぞ、お前」
「うるさい!もう、部屋にいるから!」
 里香は食器を流し台に置くと、僕の横を通って階段を上がっていった。
「……何なんだ?」
 意味が分からない。

「はあ」
 自分の部屋に戻ってくると、私はベッドに倒れこんだ。なんとなく匂いを嗅いで見ると、バカのにおいがした。そのことが嬉しくて、でも、やっぱり怒りはおさまらない。
「バカ裕一!」
 いいながら、枕を殴る。何度も殴って、皺だらけになったところでやめておいた。
「はあ」
 今日何度目かの溜息。まだ九時半だっていうのに、十回以上は出している。それくらい、悩んでいた。
「……やっぱり、魅力……とかないのかな?」
 胸とか触ってみる。昨日とおんなじことしてる。それが何だか悲しい。男の子って、やっぱり胸とか大きいほうがいいのかな?特にああいうバカは。だって、まあ私もだけど、Hな本いっぱい持ってた。いや、私はいっぱいは持ってない。せいぜい五、六冊……と、とにかく、ものすごくHだ。
 ……そういえば、前にみゆきが言ってた。
『男の子ってね、みんなHなのよ。それにね、胸とかどうでも――とかいってる人こそ、大きいほうが好きなんだって』と。
 そうなの?裕一も、やっぱりそっちの人なのかな?司くん……は、微妙だな~。あれは胸とかどうとかじゃなくて、みゆき以外に興味がなさそう。山西くんは興味ありすぎ。ロシア映画(とは名ばかりのAV上映)も、山西くんが裕一を誘ったって言うし……じゃあ、裕一は?やっぱり、誘われていくってことは山西くんと同じ?
「あーもー!イライラする!」
 なんで、こんなに悩まなければいけないのだ。バカ。
 ちょっと、涙がこぼれた。

「あーもー!意味わかんねえ!」
 一人で朝飯を食べながら、僕は叫んだ。下手したら里香に聞こえてるかもしれないけど、知るもんか。
「なんでオレが切れられなきゃならないんだよ!マジで意味わかんねえぞ、里香のやつ!」
 一応僕の分のご飯も作ってくれてたみたいだから助かったが、一人の食卓って言うのは、なんか泣きたくなる。
「ああ!うだうだ考えるのは性にあわねえ!こうなったら、直接聞き出してやる!」
 とはいえ、里香の作った飯を残すわけにはいけないので、一応、全部食った。
「ごちそうさま!」
 流し台に食器を置いて、二階に上がる。
「里香!入るぞ」
「え!ちょ、まって!」
「は?」
「いいから!ストップ!」
 あんまり必死に叫ばれたから、僕はドアノブから手を放して後ろに下がる。心なしか声が震えてたのは気のせいかな?
「なんだよ」
「……よし。いいよ、入って」
「あ?ああ」
 なんだったんだ、いったい。ドアを開けると、ベッドの上に里香が座っていた。
「なに」
「いや……えっと」
「なによ」
 ああ。さっき待ったをされたせいで勢いがなくなったじゃないか。いや、もともとそんなにないけど。なんか眉がだんだん吊上がってるし、里香のやつ。怖いって。それ。何度もみてるけど、やっぱ怖い。
「なによ!」
「いや……あのさ」
「?」
「な、なんで怒ってんのかなーと」
「……だから、なんでもないっていったでしょ?」
「いや、だからってさ。あんなに切れられたんじゃ、何があったか気になるだろ?」
「……別に」
「あ、そう」
 会話が、続かない。てか、空気が重い。すっげえ重いよ。四トントラックぐらい重いよ。潰されそうだよ。てか、実際潰されてそうだよ。でも、ここで引くわけにもいかないため、僕は里香に近づいた。
「あのな、理由も分からずに切れられてニッコニコしてる人間がいると思うか?あ、いや、司は抜きで」
「さあ?いるんじゃない?」
「お前な……」
「なによ」
 切れようかな。なんか、急激に切れたくなってきた。いや、待て待て戎崎裕一。あの里香だぞ?こっちが切れたって、その何倍……何十倍もの怖さで逆転されそうだ。てゆうか、たぶん、される。ああ、でも、切れたい。僕だって、切れたら迫力はあるだろう……たぶん。いや、あるって!ああ、この脳内会議ともいえないようなこと、前にもやったことあるきがするな。
「裕一?」
「……切れてもいいか?」
 何確認してるんだよ、僕は。
「別にいいけど、そんなのどうでも」
 プチッ。何かが切れた音がしたな、今。あれか?何とか袋の緒ってやつかな?うはは。人って切れそうになると笑うもんなんだな。
 とりあえず、切れる決心は固まった。
「ふっっざけんな!」
「なによ!」
「何じゃねえだろ!そりゃこっちの台詞だ!」
「はあ?意味わかんない!なんで怒られないといけないのよ!」
「だから、そりゃこっちの台詞だって言ってんだろうが!」
「知らないわよ!バカ裕一!もう出てってよ!」
「いわれなくとも、出てってやるよ!」
 バッターン!思いっきり力いっぱいドアを閉めて、階段を下りたところで気づく。
「……しまった」
 落ち着いたときに考えると、やっぱり切れるべきじゃなかった。僕は何のためにここにいる?里香を守るためだ。なのにケンカして興奮させてどうすんだよ。心臓に何かあったら……しかも、今までにないくらい怒ったな、僕。ああ、怒ったよ。でも、里香全然怯まねえし。むしろいつもより怖かったし。それに言葉を返してた自分にも少し驚いたけど。ああ、やっぱり僕って迫力ねえのかな~、じゃなくて!
「あ、あやま……」
 後ろを振り返ると、なにやら里香の部屋からどろどろとしたものが漂ってきている気がした。てか、どす黒いオーラが見える。近寄れない、たまらない♪カ○ビー……どうでもいい!歌詞もなんか違うし!ああ、パニックッた。しまった。本気でまずい。
「……どうしよう」
 その場にうずくまって、頭を抱えた。

 バカ!!って叫びたかったけど、玄関のドアが開いた音はしないし、裕一はどうやら出て行ってないみたいだ。出てくっていったくせに。
 それにしても、あんなに怒った裕一始めて見たな。ちょっと驚いた。そりゃ、私が勝手に怒ったよ。裕一にあたったよ。でも、その原因だって裕一なんだし、私が怒られる筋合いはない。……と思う。いや、ないって……たぶん。いや、絶対!うん。
「……どうしよう」
 そりゃ、心配だ。このまま終わっちゃったらとか考えると、どうしようもなく心配だ。でも、自分から謝りにいくって言うのも、かなり癪だ。事の発端は裕一だ。いや、私だけど、その原因が裕一なんだから、裕一だ。だったら、裕一が謝りに来るのが当たり前だ……と思う。だから、待つ。来なくても、待つ。…………十分待っても来なかったら、私から謝りに行こう。しょうがないけど、かなり癪だけど、それでも、謝りに行こうと思う。
「終わっちゃったり、しないよね」
 このぐらいで、と自分に言い聞かせても、結局心配になってる自分がいる。ずっと病院生活だったからか、男女の仲って言うのがどのくらいで終わっちゃうのか分からない。あ、でも、亜希子さん曰く『ケンカしないカップルは、絶対にすぐ終わる』らしい。だから、こういうのもたまにはいいのかもしれない。まあ、もしかしたら、だけど。
「……来る、よね」
 来なかったら、許してやらない。
 さっきと違うことを考えつつも、来る事を期待して、布団にもぐりこんだ。
 なぜか分からないけど、また熱いものが込み上げてきて、私は声を殺して、泣いた。

「……よし」
 何がよしなのか分からないけど、とにかく謝りにいくしかないだろう。何か里香にも事情があったんだ。学校で何かあったとか、お母さんがいなくてイライラしてるとか、そんなところ。だから、あの場所は怒っちゃうシーンじゃなかった……と思う。いや、思いたい。これで謝りにいっても許してもらえなかったら、一生犬になるとか何とか言おうか。そしたら、たぶん百万歩譲ってとか言って、許してくれると思う。うん。……許してくれなかったらどうしよう。
「いや、大丈夫だって」
 多分。
「……よし」
おんなじことを繰り返して、僕は階段を上っていった。里香の部屋の前につくと、急激に緊張してきた。ドアを開けた瞬間刃物とか飛んできそうだ。でも、ここまで来て引くわけには行かない。
「……よし」
 三回目。
「里香……入るぞ」
「ま、まっ」
「へ?」
 里香の言うことを聞かずに、僕はドアを開けた。直後、里香が布団を自分にかぶせた。それは、何か?僕の顔なんて見たくもないというあれか?ははは、いや、それでもいいさ。これからいやというほど見せてやる。
「里香。悪かった」
「……」
 とりあえず、謝る。だって、謝っとかないとやばいかもしれないし。
「えっと、里香にもなんかあったんだろ?だから、あんなにイライラしてて」
「……」
 無言。それが怖い。もしかしたら、里香は頭の中で僕をどうやって追い払おうか、下手したら殺そうかと考えているかもしれない。それでも、たとえ殺されそうになったとしても、謝ろう。
 一歩前に踏み出して、後ろ手でドアを閉める。もう一歩踏み出して、ベッドに近づく。
「あのさ、里香」
「……いい」
「へ?」
「いい。別に、もうそんなに、怒ってない」
「そ、そうか?」
「……」
 なんとなく声が震えている気がする。もしかして、また泣いてんのか?
「うはは」
 笑いながら、といってもから笑いだけど、ベッドに近づく。
「里――」
 後一歩進んだらベッドにぶつかるって言うところまで近づいたとき、里香が急に布団をはいで立ち上がって、僕の服の襟を掴んだ。
「は?」
「バカ」
 瞬間、僕は引き倒された。というか、押し倒されたといったほうが正しいのかもしれない。だって、僕の上に里香が乗ってるし。
「バカ裕一」
「里香?」
 何気に目が赤い。やっぱり泣いていたのだろうか。
「大嫌い。バカ裕一」
「……」
「Hだし、すぐ怒るし、女の子のこと、何にも分かってないし」
「……悪かったな」
「私のこと、全然分かって……ない、し…それ、に……もう、分け、わかんない」
 里香の口から嗚咽が漏れ出す。ヒグ、ヒック、と、聞いてるだけで胸が締め付けられた。悲しかった。なくなって言いたかったけど、そんなこと無理に決まってる。里香の泣いてるところなんて、初めて砲台山に言ったとき以来のような気がする。僕の服に里香の涙が落ちてきて、服をぬらす。
「うっく、ヒック、もう、大、嫌い。バカ」
「……」
 僕の腹においてある里香の手を握って、僕のほうに倒した。もう片方の手を里香の腰に回して、力いっぱい抱きしめた。もしかしたら痛かったかもしれないけど、里香は拒絶せず、ただ泣いていた。
「ヒック、今まで、好きって、言って、くれたこと、ないし」
「……ないっけ?」
「……ないよ」
「あー、えっと、うん」
「バカ」
「うるさいな」
「ふん」
 いやしかし、今までいったことなかったのか、好きって。やっぱり、不安だったりするのかな、里香も。もしかしたら、それでこの騒ぎだったり?いや、それはさすがにないよな。
「……」
「……あー、その、何だ?」
 改めて言うとなると、かなり恥ずかしい。でも、やっぱり言わないといけないんだよな、ここは。
「……あーうん。えっと、オ、オレはさ」
「……何?」
「いや、その……あー、安心しろよ。ちゃんと好きだから。うん。オレは里香のことが、好きだから」
「……」
「だからさ、あんまり泣くなよ。オレ、里香の泣き顔、あんまり好きじゃねえから」
「ゆう……いちぃ」
 言ったさ。言ってやったさ。かなり恥ずかしいよ。顔真っ赤だよ、たぶん。でも、言わなきゃだめなんだって、そんな感じがした。だから、言った。なんか悪いか。まったく、全然悪くない。よくやったぞ、戎崎裕一。お前は漢だ。うん。
 里香が僕の服に顔を押し付けて嗚咽を殺す。それでもやっぱり漏れてしまう。まるで悪戯をして怒られた子供みたいに、里香は泣き続けた。僕は里香の頭を撫でた。何度も何度も、里香の頭を撫でた。砲台山のときみたいに、何度も撫で続けた。
「どっかの偉人も言ってたじゃねえか。えーっと、何だっけ?ああ、そうそう」
「?」
「えっとだな『泣きたいときは思いっきり泣けばいい。泣き終わった後に、泣いた分の倍、笑えばいいのだ』ってさ。だからさ、うん、今は思いっきり泣けよ」
「……」
「その後でさ、一緒に笑おうぜ。何でもいいよ。テレビでもいいし、小説でもいいし、オレが何か面白いことしてやってもいい。とにかく、笑おうぜ」
「……うんっ」
「うはは」
 里香はしっかりと頷いて、僕もしっかりと笑って、里香の頭を撫で続けた。それはまるで、子供をあやす親のように、親にあやされる子供のように、とても自然なことだった。だから、たぶん、思ったんだ。
「笑うぞ」
「うんっ」
「だから、今は泣けってば」
「うんっ」
「どっちだよ」
「わかんない」
「うはは」
「あはは」
 この人と、里香とずっと一緒にいたいと、改めて、思ったんだ。

 一応、許してあげよう。いつの間にか、私の涙は止まってて、裕一の声も止まってて、ただ、気持ちのいい時間だけが過ぎていた。それでも良かった。そのほうが良かった。思いっきり笑える瞬間があれば、それだけで幸せだって、本気で思った。
 ただ、裕一が好きって言ってくれただけ。泣くなって言ってくれただけ。でも、そのあとに、誰がいったかも分からない言葉を言って、逆に泣けって言って。ただ、それだけ。それだけのことが、どうしてこうも大切に思えるんだろう。
もしかしたら、私の命が短いからかもしれない。
 もしかしたら、隣に裕一がいたからかもしれない。
 もしかしたら、この温もりのせいかもしれない。
 もしかしたら、その全部。
「裕一」
「ん?」
「……私も、大好きだよ」
「……おう」
「ずっと、一緒にいようね」
「ああ、絶対だ」
「うん。絶対。約束だから」
「分かってる」
「ずっと一緒」
「ああ、ずっと一緒だ」
「えへへ」
「うはは」
 窓から差し込んでくる日の光が、とても心地よかった。

「でさ、結局、何を怒ってたわけ?」
 僕は、いまだにちゃんと分かっていない疑問を里香にぶつけた。
「……鈍感」
「は?」
「だって、裕一、何にもしないんだもん」
「それって、昨日の話しか?」
「そうだよ。私がすぐ隣で寝てるのに、何もしないんだもん。すぐに寝ちゃうんだもん。だから、今朝はそれを思い出して、イライラしてたの」
「……何かしてほしかったのか?」
「ち、違う!そういう意味じゃなくて!」
「はいはい。分かってるって」
「う~」
「うはは」
「むかつくっ!バカ」
 言いながら、里香は僕の頭を手で殴ってくる。といっても、漫画とかだったらポカポカという気の抜けた効果音がするような感じだけど。
「やめろってば」
「うるさい!バカ」
「いてえから、マジで。おい、だんだん強く――本気でやめろって!」
「ふんだ」
 だんだん痛くしてきやがった。最後のほう、なんか本気で殴ってきたし。
 里香の猛攻が終わった後、僕は半身を起こした。当然、僕の上にいる里香も半身起きるわけで。
「ひゃっ」
「ったく。お前、最後は絶対本気だっただろ」
「知らない。バカ」
「バカバカ言いすぎだろ」
「バカ」
「おまえな」
 いいながら、僕は里香の顔を見つめる。目が合うと、里香は恥ずかしそうに顔を背けた。
「見ないでよ」
「うはは」
 嫌がってるようなので、嫌がらせとして、そのまま見つめ続ける。しかし、なぜか分からないけど自然と笑みが浮かぶ。いや、そんないやらしい笑みじゃなくて、微笑っていう感じだ。
「裕一?」
「ん?」
 里香の言葉に反応した瞬間、唇を防がれた。まあ、昨日僕からしたような、ああいう色っぽいキスじゃないさ。でも、それでもいいなって。むしろ里香が望むなら、そのほうがいいなって思った。だから、里香の腰をひいて、体を密着させた。
「……」
「……」
 沈黙。心地いい沈黙。さっきのような、重い沈黙じゃない。それが、なんか良かった。こんな瞬間なら、いつまでも続け、とまで思った。里香もたぶん、それを望んでくれているだろうから。
「……ん」
 少しすると、里香が名残惜しそうに唇を離した。
「うはは」
「……なんで笑ってるのよ、バカ」
「うはは」
「バカ」
 何回、バカ、って言われたんだろう。まあ、そんなことどうでもいいや。ああそれより、どうすればいいんだ?このまま18禁方向に持っていくか?いや、でもなぁ。それだったら里香がすっげえ怒りそうだしな。う~ん……
「……バカ!」
「は?」
 何だ?いきなり怒られたぞ。しかも、耳元で。やばいって、耳いてえよ。
「さっきまでなんで怒ってたと思ってるのよ!バカ!」
「はあ?いや、なんでって……」
 そりゃ、僕が何もしなかったからで……
「もうしらないっ!バカ裕一」
 言うと、里香は僕の手を払って後ろに逃げて、毛布に包まった。
 ……ああ、そういうことか。つまり、ナニをしてほしいんだな。うん、そういうふうに受け取ったぞ。
 てな分けで。僕は里香の頭の形に膨らんでいる毛布を挟む感じで覆いかぶさった。四つん這いになる感じで、里香には負担をかけてないけど。
「里香、ごめん」
「……今更謝ったって遅いのよ。バカ」
「うん、でも、ごめん」
「……鈍いのよ、裕一は」
「うん」
「女心分かってないし」
「うん」
「……すっごくHだし」
「うん……ってちょっと待て。それは、頷けねえ」
「……バカ」
 これは、OKって意味か?いや、そういう意味だ。うん。違っても、そういう意味ってことにしとこう。
「里香」
 名前を呼ぶと、里香は僕のほうを向く。
「なに――んっ」
 里香の唇に、自分の唇を重ねる。気持ちのいい感触が頭を支配して、何も考えれなくなる。そのまま、里香の口に舌を侵入させる。
「んっ……ゆう…いちぃ」
「……りか」
 里香も僕の舌に自分の舌を絡ませてきて、口の間から唾液の音がし始める。それが恥ずかしかったのか、里香の顔がどんどん赤くなっていく。
「んっ、ぴちゅ、くちゃ」
 これは、本当にエロ本なんか比じゃねえよ。多田さん、あんたもこんな感覚を味わったことがあるのか?……ありそうななさそうな。ほんとに食えない爺さんだった。
「ぷはっ、ん、ゆうい、ち、息が」
 途切れ途切れに里香が言う。その言葉の意味を何とか理解して、名残惜しく唇を離す。僕と里香の唇に唾液の橋がかかる。
「っぷは……はあ、はあ」
 キスだけで疲れたのか、里香はぐったりしている。
「里香、大丈夫か?」
「ん……大丈夫」
「心臓、とか」
 僕が聞くと、里香は自分の心臓に手を当てる。そのあと、やけにしっかりと頷いた。
「大丈夫、いつも通り」
「そっか」
「うん」
 そのあと、なんとなくお互い黙ってしまった。僕が里香の顔を見つめると、恥ずかしそうに顔を背ける。顔は赤いままだ。
「里香……その、いい?」
「何がよ」
「いや、だからさ……その」
 僕の言いたいことを察したのか、里香ははっとすると、さらに顔を赤くして、僕を見つめてきた。少し顔が微笑んでる。それが可愛くて、僕は里香を抱きしめた。
「ひゃっ」
「うはは」
「もう、バカッ。びっくりするじゃない」
「うはは」
 少しして里香を解放して、また唇を重ねる。
 唇を話した後、里香は非常に恥ずかしそうに、小さく呟いた。
「す、少し、なら」
「は?」
「だ、だから、全部じゃなくて、少しなら、許す」
「……少しって」
 どこまでだ?とか率直なことは聞けなかった。とにかく、少しは少し。そういうことなんだろう。
 僕は里香を押し倒して、里香の上に、さっきのように覆いかぶさった。

「ん、はっ……ふわぁ」
 服の上から里香の胸を揉むと、ブラジャーをつけてないみたいに柔らかかった。
「里香、すげえやわらけえぞ」
「んっ、バ……カ、ふあ!」
 胸を揉むと同時に耳たぶも甘噛みしてやると、里香は悦んだ。今まで以上に大きな嬌声を上げて、腰を浮かした。
「里香、脱がすぞ」
「ん……」
 僕は里香の服を上にずらす。里香の素っ気無いブラジャーが現れる。それを上にずり上げると、里香が少し苦痛の悲鳴を上げた。
「里香?」
「ホック……だから、痛い」
「ああ、ごめん」
 僕はそういいながら、里香の背中に手を回してホックをはずそうとするが、なかなか外れない。まあもともとブラジャーの構造なんて知らないから、はずし方なんてちゃんとはわかんないんだけど。美紗子さんのときは……思い出したくもないけど……まあ、壊れてたから。
 しばらくごそごそやっていると、里香は溜息をつきながら半身を起こした。僕も後ろ側に起き上がる。
「もう、遅い」
「し、仕方ねえだろ。はずし方なんてわかんねえんだから」
 里香は背中に手を回して、ブラジャーをはずした。すると、里香の小さな胸が、目の前に生で現れる。とたんに理性が吹き飛びそうになった。というか、吹き飛んだ。
 僕は里香の手を掴むと、顔を里香の胸の前まで近づけて、息を吹きかけた。
「ひゃあ!」
 里香が上げる声も、僕の理性を吹き飛ばす道具にしかならなかった。
 僕はそのまま、里香の双丘をつまみ、僕と反対側に押し倒した。
「ふわ……ゆう、いち」
「里香」
 名前を呼んで、僕は片方の乳首を口に咥えて、もう片方をそれまで以上の強さでつまんだ。
「ひあっ!ん、やあ!」
 里香の声がどんどん大きくなっていくが、そんなことは気にせずに、僕は里香を虐め続けた。
 里香の乳首を吸うと、里香はさらに高い嬌声を発した。
「ふあ!吸っても、何もでないよぉ……ひぐぅ!」
 顔を上げて、里香にキスをする。それと同時に、今まで口があった部分にもう片方の手を置き、もう片方と同じようにつまんだ。
「ん!んんっ!ふあ……」
 唇を離すと、里香は寂しげな声を発した。そのまま、片方の手を下のほうに下げていく。
「ふあ……やっ、ゆういち、だめぇ。そこ、触っちゃやだ……」
 僕が里香の秘所に触れると、里香はそれにも反応した。
「ひゃう!」
 まだスカートの上からだというのに、すっげえ感度いいな、里香のやつ。考えながらも、僕はスカートの中に手を伸ばす。
「や、やだ。だめだよぉ、ゆういちぃ」
「今更だめもないだろ」
「少しって、言ったのに……」
「……ふうん。じゃあ、やめる」
「へ?」
 いうと、僕は里香の秘所から手をどけて、体を起こした。
「いやなんだろ?だったらやめようぜ」
「あ、えっと、その……」
「そういえば、もう昼だし、腹減ったし。里香のお母さん、いつ帰ってくるかもわかんねえしな。やめたほうがいいって、やっぱ」
「ママが帰ってくるの、六時過ぎ……だし」
「六時過ぎだから、何だよ。やめてほしいんだろ?」
 僕がニヤニヤしながらそういうと、里香は顔を背けて考え込む。その顔がまた可愛い。真っ赤にして、しかもさっきまであんなことをしていたもんだから、少し乱れてるし。
「ゆ、ゆういち……」
「ん?何だよ。ほら、さっさと起きて飯食おうぜ?それとも、どっかでかけるか?」
「いや……その」
「何だよ。言いたいことがあるならちゃんと口で言わなきゃわかんねえぞ?ほら、何だよ」
「う~……」
 里香は僕の言葉に少し俯いて、また僕を見て俯いてを何度か繰り返し、少しすると、決心したように顔を上げた。
「……て」
「え?何」
「だ、だから……その……つ、続き」
「続きを、何だよ」
「……分かってるくせに」
「さあ?どうだか」
「……だから、さ、さっきの続き、してよ」
 顔を真っ赤にして俯く。そろそろ許してやろうか、それとももう少し焦らそうか。考えた挙句、許すことにした。だって、これ以上焦らすとほんとにやめようとか言い出しそうだし。
 里香の秘所に手を伸ばすと、里香は腰を浮かせて嬌声を上げた。
「ひああっ!」
 僕はすぐに、余ったほうの手で里香の胸を弄んだ。同時に、里香の乳首を口で吸う。里香はさらに高い嬌声を上げながら、僕の服にしがみついてきた。
「ふあ!ひゃっ、はあ!うあ……や、ゆういちぃ」
「里香、イキそうなのか?」
「う……ん、もう、イク。イッちゃうよぉ」
「いいぞ、イッても」
 先ほど焦らされたせいで、性感性が強くなっているようだ。いいながら、僕は里香の秘所に人差し指を入れる。
「ふあ!だ、めぇ!イク!イッちゃううぅ!」
 中をかき混ぜると、里香はさらに強く僕の服にしがみつく。
「ひあぁああぁあ!」
 叫ぶと、里香は絶頂達したらしく、僕の服から手を離して、ベッドの上に倒れこむ。
「ふぁ……はぁ、はぁ」
 指を里香の中から抜き、ついた愛液を舐める。何だか味はよく分からなかったけど、ぐちゃぐちゃしてるっていうのは分かった。そのまま、僕はこの先をどうしようか悩んでいた。

「裕一、いい?」
「ああ……」
 裕一のズボンのジッパーを下ろすと、大きくなったソレが飛び出してきた。といっても、トランクスを穿いているから、まだ生ではないけど。
「……」
「……」
 恥ずかしくなったのか、裕一は顔を赤くして背けた。男の子も、やっぱり恥ずかしいのかな。
「裕一、これ、どうすればいいの?」
「いや、それはだな……舐める、とか、咥える、とか」
「なっ!」
 そんな馬鹿な!舐める?咥える?これを?こんな、大きいものを?それは、その、裕一がしてほしいことなら、して、あげたいけど……でも、その……いささか、抵抗がある。何より、このままじゃ咥えるも何もない。
「裕一、ズボン、邪魔」
「ん?あ、ああ」
 私が言うと、裕一は立ち上がってズボンを脱いだ。トランクスは、なぜかまだ穿いている。
「裕一?」
「え、ああ、えっと……」
 男の子も、もしかしたら抵抗があるのかな、人の前で裸になるって。下手したら、女の子よりも抵抗があるのかもしれない。だって、その、そんなものがついているんだもん。
 裕一は結局トランクスを脱がずに、元の位置に座った。これは何?脱がせろって言ってるの?なんか、子供みたい。
「脱がすよ?」
「え?あ?え、ああ。お、おう」
了解を得たので、私は裕一のトランクスを脱がした。すると、グロテスクなものが目の前に反り立って、少し声を出してしまった。
「ひゃっ……おっきい、てゆうかグロイ」
「……あのな」
 何だか文句があるみたいだったけど、上目遣いで睨んだら、黙って顔を背けた。
「な、舐めればいいんだよね」
 呟いて、裕一のソレを舐めた。何だか、変な味と匂いがしてちょっと気持ち悪くなったけど、すぐになれた。というか、そんなことにかまってられるほど、頭が正常じゃなくなったのだ。この匂い、何だかへんな感じがする。嗅ぐと頭がぼ~っとなって、何も考えられなくなる。
「んっ、ふっ、ぴちゃ、くちゅ」
「り、里香?」
「ふぁに?」
「あ~、えっと、なんでもない」
 夢中で舐めたりしていると、先っぽから液体が出てきた。これが、つまり、あれなんだろうか?その、だから、まあ、あれ。それをなめ取って吸ったりしてみる。
「うあ……っ」
「ひもひいい?」
「ああ……」
 それからしばらく色んなとこを舐めてたけど、さすがにこれだけじゃいけない気がしてきた。というわけで、さっきの復讐をしようかと考えた。裕一のソレから口を離すと、裕一を上目遣いで見てにやっと笑ってやった。
「裕一、何かしてほしいんじゃない?」
「は?……いや、えっと」
「言いたいことは口で言わなきゃわかんないんでしょ?この次何したらいいかわかんないよ」
「あーっと、それはだな、その」
 恥ずかしいのか、裕一は顔を背けて真っ赤になっている。こんな裕一も可愛いなーと思いながらも、私はさらに裕一を攻め立てる。
「ほら?何?遠慮せずに言ってよ。それとも、恥ずかしいの?」
「っお前、わかっててやってるだろ」
「さあ?」
 裕一が悔しそうな顔をして私を睨む。今日ばっかりは自分のほうが優勢だとでも思ってたのかな。そんなこと、あるわけないのに。裕一はいつだって私の下。これは決定事項。まあ、たまには、上にたってほしいときもあるけど、それはそれ、これはこれ。
「だ、だから」
「なに?」
「お、オレのを……だな、その」
「裕一のを、何?」
「く、咥え……い、言えるかー!」
 言うと、裕一はまた顔を背ける。もう、根性ないんだから。
「仕方ないな~、もう」
 言いながら、私は裕一のものを咥える。大きくて全部は入らないけど、途中までなら、何とか入った。
「ふん……んっ」
「里香、無理、すんなよ」
 言いながら、裕一は私の頭を撫でる。いつも自分がやってることをされると妙に恥ずかしい。でも、嬉しかったりもする。裕一のを咥えたまま、私は頭を上下に動かした。
「んっ、ふっ、くちゅ、ふあっ」
「うあ……やばい、里香、気持ち良い」
「んっ、はっ、ぴちゅ、ちゅ、くちゅ」
「うわ、やばっ!出る!」
 裕一が言うと、私の口の中に裕一の熱いものが吐き出された。裕一のソレも熱いけど、それより熱くてどろどろしてる。裕一のソレを口から離して、出されたものをくちゅくちゅと口の中でかき混ぜる。すっごい匂いがした。それに苦い。おいしいか不味いかって言われたら、確実に不味い部類に入る。それでも、私は必死にそれを飲み込んだ。
「んぐっ、ぷはっ……はあ、はあ」
「里香、大丈夫か?」
「ん……大丈夫、だから……裕一」
「ん?」
「私、もう、我慢、できないよぉ」
 なぜか目元から涙があふれてきて止まらなかった。もともと涙目にはなってたけど、まさか溢れてくるとは思わなかった。裕一は私を抱きしめて、何度も頷いてくれた。それが、妙に落ち着いた。

「里香、いいのか?」
「うんっ、いいから、はやくぅ」
 里香の了承を得たので、僕は里香の亀裂にソレを当てる。
「ひあっ!裕一の、当たってる」
「里香、いくぞ」
「うん、きてっ」
 里香が頷くと同時に、僕は腰を落としていった。里香に覆いかぶさる形になっているため、ソレはすぐに里香の中に入って言った。
「ひぐうっ!つあ!い……たい」
「大丈夫か、里香」
「ん、うん」
 里香の中は、ぐちゃぐちゃに濡れているとはいえきつくて、僕のものを拒んでいた。
「里香、ちょ、力抜け」
「んなこと言われたって、ひぐう!無、理、だよぉ」
「っ……」
 僕は里香の耳のすぐ横に顔を持っていって、その耳を舐めたり甘噛みしたりする。それと同時に、手で里香の双丘をつまんだりする。
「ひあっ!ひゃっ、うあ!」
 すると、里香の体からどんどん力が抜けていった。それからも胸などに刺激を与えながら、少しずつ腰を落としていった。
「あ、うあっ!やっ、はい……てる。ゆういひの、はいってるよぉ」
「っ、里香」
「うあっ!や、だぁ、ふああ!あ……も、無理だよぉ。ひぐう!」
 少しだけ腰を落とすと、何かが僕の侵入を拒んだ。つまり、処女膜というやつだろう。僕はそれを無視してどんどんと腰を落としていった。何かが割れたような感じがした後、里香が小さく呟いた。
「いた……い」
 里香の秘所から血があふれてくる。分かっていたとはいえ、ちょっとショックな光景だった。見るに耐え難い。それでも、人間の、いや、動物の本能か、僕も里香も快感を求めて、僕はさらに腰を落としていった。
「あっやっ!ふあっ!ゆういち、ゆういちぃ!」
「りかっ」
 腰を落とし続けると、里香の奥に到達してようで、壁のようなものに僕のものが当たる。
「ふあっ!」
「っ……はあ、はあ」
「はあ……」
「里香、ちょっと休むか」
「う、ん。でも、すごいよ……」
 それから少し休んで、僕はまた体を起こした。
「里香、動いて、いいか?」
「うん……でも、ゆっくり」
 頷いて、僕は少しずつ腰を動かす。
「あ……はあっ!ひあ!ふわ!やっ、ゆういち!」
「里香、すっげえ気持ちいいぞ」
「うあ!やあ!ひん!あ、やあ!」
 里香は快感におぼれたようで、僕が話しかけても何も言わない。だから僕も、ただ快感を求めることにした。だんだん腰の動きを激しくして、浅くついたり深くついたり、それを繰り返したりして、里香の反応を見た。
「うああ……はあっ!うあ、やあ!だめぇ!ひう!」
「里香……っ」
 そのままピストンを続けていると、次第に淫らな音が大きくなっていった。何だかその音を聞くのが恥ずかしくなったけど、それよりも体は快感を求めているようで、僕は腰を止められなかった。
「いや!ふあ!音……でてるよぉ!ひぐう!」
 だんだんと絶頂の予兆が高まっていき、僕は少し悩んだ。このまま膣内に出してしまうか、それとも外に出すか。
「里香……このまま、膣内に」
「ふえ?はっ!やあ!うあ!ゆういちぃ……ひう!」
「うっ、やば、イクぞ、里香」
「わ、わらひも、もうらめぇ!うあ!ひゃん!」
「っりか」
「ゆういちぃ!」
 里香が僕の背中に手を回して、爪をたててくる。痛みなんてものは、あったんだろうけど、全く感じなかった。そのまま僕たちは、一緒に達した。
「うっ、っつ」
「ひゃああぁあ!うあ……はあ、」
「っつ」
 僕が里香から抜くと、僕の精液が溢れてきた。
「うあ……ゆういちの……でてるぅ」
「里香」
 僕はそのあと里香の隣に倒れて、里香を抱きしめた。よほど疲れたのか、目を閉じるとすぐに眠ってしまった。

 ……恥ずかしい。この姿は、恥ずかしい。いや、さっきまで何十倍も恥ずかしいことしてたんだけど、落ち着いた後考えてみたら、これは恥ずかしい。だって、まだ裸だし。目の前に裕一の胸はあるし。体の一部はじんじんするし。
「裕一のバカ」
 なんですぐに寝ちゃうんだろう、このヘタレは。おまけに膣内に出しちゃうし。今日は、一応安全日だけど、もし危険日とかだったらどうするつもりだったんだろう。本当、バカ。
 ……まあ、許してあげよう。一応、ヘタレは返上……できてないけど、私とこんなことする根性はついた……のかな?いや、ついたって。うん。だから、許す。
 裕一の胸から顔を離して、壁に掛けてある時計を見る。十一時半。もうご飯の支度をしなきゃいけない時間だ。でも……
「……もうちょっと、いいよね」
 呟いて、また裕一の胸に顔をくっつけた。ずっと続けばいいのに。とりあえず、願うくらいは許されるだろうから。だから、願った。
 ずっと、この人と一緒に入れることを。面と向かって言えないことだから、心の中で。
「ありがとう」
 呟いて、微笑んだ。さて、もう少ししたら、裕一をたたき起こして後片付けをしなくては。ママに見られたら……想像したくもない。

「で?ストレスは解消できたのか?」
 里香にたたき起こされて、僕は後片付けをしている。もちろん、服は着たさ。ああ、当然、ズボンも穿いた。
「何のこと?ほら、そっち持ってよ」
 里香はとぼけた顔をしながら、シーツを持ち上げるように僕に指示する。僕はしぶしぶ頷きながら、シーツを持ち上げた。
「これ、どうすんだ?」
「ん?洗濯機に入れて洗うよ」
「ばれたりしないのか?」
「……そのときは、無理矢理襲われたって言う」
「はあ?お前、思いっきり気持ち――っぶ!」
「それ以上言ったら、殴るから」
「殴ってから言うなよ」
 まったく、なんて女だ。僕を刑務所にでも入れたいのか?いや、絶対はいってやらねえ。尋問とかされたら、本人の同意の上だって言ってやる。むしろ向こうから誘ってきましたって言ってやる。里香の株だって下げまくってやる。もっとも、それが通るほど甘くはないだろうけど。
 尋問とかされたらどうしようとか本気で考えながら、僕たちは後片付けをした。そのあと食った里香の飯は、最高にうまかった。
〈end〉
蛇足
 これはほんとに蛇足だ。いらないことだ。無駄なことだ。でも、一応。
 里香の部屋を漁ったことがばれて――引き出しの中のものの位置が少し変わっていたらしい――十日、口を聞いてもらえなかった。正直、死ぬよりつらかった。死んだほうがマシだった。ほんとに。まいった。

COMMENTS

GJ! ハンザイシャさんの力、存分に見させていただきました。 
かなり里香と裕一が生き生きしています。並の情熱じゃここまで書けないでしょうね。
裕一が里香におねだりさせたり、逆に里香が裕一にフェラのおねだりさせたりさせていた所で勃ってしまいましたw
エロシーンは淡泊でやや抜きづらい感じだとは思いましたが、手順や行為はツボをちゃんと押さえていて、もっとエロ文を増やせばより良くなるかと思います。
まあ、ハンザイシャさんのSSは恋愛描写重視ということですし、裕一目線と里香目線の使い分けも効果的に働いていたのではないでしょうか。
強いて言うなら、Hし終わった後の雰囲気をもっと大事にして、もう少し煮詰めてSS全体の終わりに持っていっても良かったかなあと思います。
なんにしても、掲載処女作でのこの出来は素晴らしいです。
これからも頑張ってくださいね。次回作を楽しみに待ってます!

まず、キスの時や、キレる時の裕一が、冷静すぎる感じがあるのが、
気になりました。このあたりの感想は、個人差があるかもしれませんね。
で、・・・肝心(?)なエロシーンですが、描画に甘い部分があるのが残念ですね。
例えば、
>片方の手を下のほうに下げていく
では、表現が曖昧なので、右手か左手かが、良く分かりません。
> 僕が里香の秘所に触れると、里香はそれにも反応した。
>「ひゃう!」
> まだスカートの上からだというのに、
 3行目まで読まないと、「スカートの上から」触っている事がわかりません。1行目で浮かべた妄想を、3行目で修正する事になります。
といった感じです。他にもありますが、このへんで止めておきます。三キソケさんが「抜きづらい」と感じたのは、このような表現が複数存在するからではないでしょうか。
 まあ、何だかんだと言いながら、エロシーンで、おっきしたのでw、今後の作品に期待したいです。今回のように、里香視点を入れた作品を是非お願いしますね。

>描写
それはあるかも。いつパンツ脱がしたんだ?とか。気付いたら全裸になってた
「今まで相手の心が見えていなくて少し不安で、見えていって知る事が出来るのが嬉しい」みたいな感じは出てたけど、さらにこの辺の情景描写を書き込めばさらにレベルアップすると思う。
ってか普通に二人のえっちが初々しくて「ふたり」って感じがしてるのが良かった☆

いやいやなかなかでしたな。完璧ではないですが、それでもよかったと思います。おつかれさまでした。

No title

里香の観点が最高にかわいいく表現せれてます。祐一も優しく書かれてて、なんだか暖かい気持ちになりました。おつかれさまです。

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