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作:Ξキソケさん「ハーフムーンイーター:後編」

―――東京から帰ってきたという美紗子さんに弄ばれて、里香を犯した次の日、
………僕は一日中自分の病室に引きこもっていた。文字通りひきこもりだ。
そして、例によって今は消灯時間を過ぎた夜遅くだ。
昼間に大分寝てしまったので、僕ははっきりとした意識と中途半端に元気な身体を、自分のベッドの中で延々と持て余し続けていた。今日部屋から出るのは、どうしても動かなければならない時だけだった。
だから、みゆきがお見舞いに来てくれた時も、『悪いな……俺今日ほんとに調子悪いんだ……』と嘘をつきつつ自分の部屋で、当たり障りなく他愛の無い話しを十分程、適当に少し話しただけだ。
僕は幼なじみの知り合いの女の子に、自分の心の深い闇を絶対に気取られたくなかった………
いつもは里香と一緒に、洗濯物のたなびいている屋上にいる時間になっても、その事をひどく鮮明に思いだしてしまっても、僕は自分を苛む感情を押し殺して、ずっと眠くもないのに目を閉じていた。
……なかば死んだふりだった。
いや、いっそ僕は死んでしまいたいのかも知れない。
だけど僕はまだ生きているから、当然トイレにも行きたくなった。
少し離れたトイレで用を足す為に、セコセコと病室から抜け出している時も生きた心地がしなかった。
だけど、そのお陰で夏目や亜希子さん、それに見知った患者と話すことが無かったのは幸いだった。
とにかく、僕は自分を病室のベッドの中に隠し通す事に成功したようだった。
でも、僕の罪は消えない……里香に合わす顔なんてない……‥
「ぁ~~~……っ……‥」
見飽きた病室の天井を見ながら、僕は無気力に長めの溜め息をついた。
………困ったことに、元気な里香の姿が僕のまぶたの裏から消えてくれないのだ。
目を閉じる度に、例によって里香に僕がこき使われていたり、一緒に病院の中を歩いていたり、本を読んでいたりしている。
もうそんな光景はありえないのに。
僕はあんな父親のようなダメ人間の様に成り下がってしまったのに。
いや、それ以下かもしれない。あんな父親さえ馬鹿に出来なくなってしまった。
「里香……」
その人の名を呟いた。一時の快楽と、自分の愚かさの為に裏切った人の名を。
犯した。僕は彼女を犯してしまった。もう取り返しの付かない事だった。
喪失の紅い血の色も里香の体温の記憶も、今の僕には罪の証にしか思えない。
しかも、僕の行為のせいで里香の心臓に負担がかかっていれば、僕は里香の命を削ったことになる。
あまりにも下らなすぎる幕切れだ。
彼女が僕にとってまさしくこの世の全てだったと分かっていたのに、あれだけ好きだったのに、それを台無しにした。
百万分の一の確率で里香が許してくれたとしても、僕は一昨日までの僕として里香に接することが出来ないだろう。
「り、か………」
僕の醜い欲望によって白くねっとりと汚された、昨日の夜最後に見た彼女の姿が目に浮かぶ。
そして、視界が涙で歪んできた。
僕は白い枕に仰向けに顔を埋めて、微かにすすり泣きを始めた。
過ちで失ったものはどうあがいても、泣き続けても二度と戻ってこないと、僕は今までの経験でいやでも知っている。
もうあの月を、里香と一緒に見る事は出来ないんだ………
そう考えると、僕はどんどん際限なく落ち込んでいった。
自分が沈黙と闇の中に溶け込んでいって、自分そのものになってしまいそうだ。
トン……
すると、僕は今まで静かだった廊下に、音がしている事に気が付いた。
周りが静かなのと、僕の神経が過敏になっていたからわかった。
ん………何の音だろう?
軽めの足音らしい音が、トン……トン……と暗い廊下に寂しく響いていて、段々とその音量が増してきている。さほど急いでいるようではないから急患でもない。
……この病室に誰かが近づいてきているんだろうか?
いや、そんな事はまずありえないはずだ。
消灯時間を過ぎたこの時間では、わざわざ一患者の僕の部屋を訪れる医者も看護婦も、お見舞いの客もいるはずがないのだ。
トン……トン……トン……
だから、この足音の主は僕には関係の無い人間の筈なんだ。……そうに決まってるんだ。
けれど僕は自分の心の隅に、ある予感が顕れてきたのに気付いてしまった。
その予感の中には、僕にとってあまりにも大きい期待と絶望が入り交じっていて、僕はその予感から目を背けたかった。
トン……トッ……
しかし、大きくなっていた足音は僕の病室の目の前で止まり、僕にその予感が、間違いでなかった事を行動で告げた。
ガチャッ……
人が、僕の病室のドアを開けた―――――

――――足音だけを前触れに僕の部屋に入ってきた人は女の子で、そして、どう考えても間違いなくあの里香だった。
暗い病室の中にはっきりとその存在が生きて動いていた。
その事が、僕の身体を弾力性の無い一つの固い塊にしてしまった。
……なんで……里香が……?
里香は色素の濃い瞳で僕をじっと見据えたまま、スッと後ろ手でドアを静かに閉めた。
ガチャ……
暗い病室にとドアが閉まる音がして、里香の黒くて長い髪といつも着ているパジャマが微かにサワサワと揺れた。
やはりいつもと変わらないちょっと強気な態度に、病気の身体を気遣う仕草やなんとも言えない切なさを含んでいた。
けれどその瞳は変わることなく、青ざめている僕の顔を真っ直ぐに見つめている。
僕は急に頭に流れる血の量が足りなくなって、まともな思考が出来なくなっていった。
自分が昨日滅茶苦茶に犯してしまった里香が、何で僕の部屋に夜中に入ってくるんだろう?
どう接したら良いのか、謝ればいいのか逃げ出せばいいのかさえも判断できなかった。
少なくても、無視する事だけは許されないとわかっていた。
息の吸い方さえわからなくなってしまいそうだ――――

――――里香が一方的に部屋に入り込んで来てから、僕は一言も里香と話せなかった。話せるわけがない。口も身体も動かない。静かに里香の出方を窺うのが精一杯だった。僕の寝ているベッドに里香が徐々に近づいてくるのを、ただ見ているだった。
近づいてきた里香は、僕の目をしっかりと見つめながら、話しの口を切った。色素の濃い瞳には、いつも僕を苛める時のような強気な光がしっかりと宿っていた。
「私にあんな事しておいて、謝りにすら来ないんだ?」
見下したような目つきと口ぶりの里香に、僕は甘んじてどんな罰でも受けたかった。
四日ほど前にもこの表情は見ているのに、まるでなくした宝物を見つけたような気分になる。
こうやって里香が僕に会いに来てくれた事が、正直にいうと泣きたいくらい嬉しかった。けど同じくらい不安だった。何故里香が僕の部屋に居るんだ?何故何でも無かったように平然と話しているんだ?
里香は僕の心に気付いているのかいないのか、マイペースに話し続けた。
「……昨日、裕一が出したの綺麗にするの、大変だったんだよ―――」
建前や屁理屈はともかく、僕は、あんな風に里香と結ばれたいわけじゃなかった……。そりゃあそうさ。本当はもっと時間をかけて、少しずつ心を通わせて、どちらともなくお互いが望んだ時に、それが自然な姿であるように結ばれたかった。それが……、自分の稚拙な精神一つで、脆くも崩れ去った。いや、そんな自然災害みたいなものじゃない。僕は自分で、思い描いていた夢も希望も、捨ててしまったんだ。
それが、もう見られないと思っていたその姿を、また見られるなんて。今更すがろうとしている自分の姿に正直呆れ果てる。
「―――すごく生臭くてグチョッとしてて、手とかティッシュで拭いても粘々してて、糸引いてとれなくて、乾いたところからくっついてきて……って裕一聞いてるの?」
里香。こんな汚い僕の名前をまだ呼んでくれるなんて……‥もう聞けないと思っていたこの声を、また聞けただけでもうれしい。けれど、僕は里香と会って良い権利なんか、無いんだ。
……僕が何も言わないからか、里香は僕の寝ているベッドの、すぐ近くにスタスタと近づいてきてまた口を開いた。里香の形の良い口が、僕の目の前でパクパクと捲し立てる。
「無視してる。………そう、逃げるの?自分のした事から?そっか……裕一って嫌がる女の子を押さえつけてえっちな事をするのが大好きの、卑怯な強姦魔だもんねぇ……」
「…………」
そうだよ。僕はどうしようもないヤツだ。里香はこんなヤツと一緒にいてはいけないんだ。僕は里香を遠ざけたい一心で、震える唇をやっと開く事が出来た。里香を犯した時に似ている恐ろしい感情が、僕に綺麗でない言葉を吐き出させる。
「………そうだよ」
「……なに?」
里香が僕の寝ているベッドに両手を付いて、より近くに近づいてきた。
「……そうだよっ……! 俺はクズで生きてる価値の無い、最悪な強姦魔なんだ……。だから、お前もこんな人間に構うなよ!」
僕がそういうと、里香は少し驚いて、それを否定するような口ぶりでこう言う。
「裕一、なんでそんなに自分を悪く言うのよっ?……あ、あたしはそんなに怒ってる訳じゃなくて―――」
僕の語調の強さに里香が少し慌てたのを見て、僕は迷路に迷い込んだような気分になった。
「ッ!………いいから構うなよッ!………そうだよ、お前こそ――」
里香が何を言っても、僕は自分を許せないのに。
「――こんな時間に男の部屋に来るなんて、どういう事か判ってるのか?」
「……裕一……?」
僕はそこまで一気に吐き出して、ある事を思いついてしまった。
……そうだよ。また里香に酷いことをして、もっと嫌われてしまえばいいんだ。昨日の夜にしたことを、同じように……
そうすれば、里香はきっともっと僕を嫌ってくれるだろう―――――
もっと、楽になれるだろう。

―――とても恐ろしいことに僕は、すぐにソレを実行に移した。
もしかしたら、もう善悪の感覚が麻痺していて、背徳を快楽にしているんじゃないかと感じ、悲しくなった。
僕はベッドの中から身体を一気に出すと、すぐ近くに立っていた里香の腕と肩を強引に掴み、今まで僕が寝ていた、シワの付いたベッドの布団の上に小さな身体をバサッと押し倒した。
そしてパジャマの上から里香の胸と右腕を押さえて、自由を奪う。その里香の反応を、見ている余裕なんか無かった。
また昨日の様に、自分が穢らわしくなっていくのかと思うと辛かったからだ。里香に、こんな自分をもう二度と見せたくなかったのに………………
「里香……もう、俺に関わらないでくれよぉっ……!」
僕の口から、弱々しい声が放たれたが、それが里香に届いたかはわからなかった。なぜなら僕が右手で里香の小さくて柔い胸に力を込めると、里香は早くも声を上げてしまったからだ。
「やぁっ……んっ……!」
里香は昨日の夜のように抵抗をほとんどしようとしない。二回、三回と愛撫を重ねても、里香はやはり僕を押しのけようとも、僕を罵ろうともしなかった。ただ、目を瞑って僕の責めに耐えているだけだ。
里香は、どうしてこんな僕に会いに来たんだ……?
僕は自分の頭の隅に滲んできた疑念を振り払うと、再び里香を『犯す』ことに集中した。里香が何を思っていても関係無い。愛撫を両手で行い、更に力の込め方を段階的につけて、里香に無理矢理にでも感じてもらう。
時折、ぐにぐにっと強く揉んでやる事もあった。パジャマと越しに揉む里香の胸は、まるでブラジャーを着けていないように柔らかく感じた。
「ふぅ……ん……や、あっ……!」
とても可愛い顔が、僕の与えた望まない快感に歪んでいく。
身体が時折ビクッと震えて、布団の上に伸びる髪の毛がサラサラと揺れた。僕はこんな状況でも興奮して勃起してしまっている自分がもの凄く情けなかった。パジャマの上から乳首をギュッと抓り上げると、里香は切なげな息を吐き出す。
「ふぁぁわっ……」
僕は更に前のめりになると、昨日と同じように里香の唇を乱暴に奪った。喘ぎ声を出す為に半開きになっていた里香の唇は、容易に僕の舌の侵入を許してしまう。
にゅるっとした僕の舌が、里香の口内に絡み付き、その中を掻き回していく。里香は拒んでいるのかどうか、僕の舌に自分の舌を絡めてくる。
しつこく絡み付いてきて、たまに受け入れる事もあって気持ちは良かった。二人の口元から、水音がちゅ‥‥ちゅっ……と漏れ始めた。
僕は目を瞑っている里香の顔をふと見た後、里香の下腹部にパジャマの上から触れてやる。右手の指でそこを軽く握り込むようにすると、里香は今までと声質の違う喘ぎ声を出した。
「ひぁんっ!」
更に責め立ててやるつもりで、つついたり、力の強弱を変えていじってやる。
「あっ……ふぁっ……あ……んっ!」
そこの頼りないほど無防備で柔らかい感覚は、パジャマの上からでも十分にわかり、僕の浅ましい興奮を火で炙るように、更に煽っていった。
里香の身体が微かに震えたのを見て、僕は里香の下半身のパジャマとショーツをずり下げた。
「あっ――――」
自分の下半身が何も着けぬまま外気に晒された事に、里香は単純に驚いたようだった。
僕は構わず、そのまま里香の秘部を少し力を入れて右手の指の先と腹でなぞっていく。
すりすり、すりすりと愛撫をして里香を陥落させていく。
「やぁっ………! やめ、て……」
里香の髪と同じ色と質の、控えめに生えている恥毛を上下にかきわけて、その奥にあるはずの秘裂にまで指を伸ばしていった。
「んっ………!!」
そこに僕の指が触れる度に、里香は切なげな吐息を半開きの口から何度も漏らす。良く整った顔が、だらしなく艶やかに乱れていく。
「あっ……! あっ……!……ゃっ……!」
あまり緩慢にしてはいけないと思って、里香の乳首を左手で摘み上げてやる。汚れなく直線に合わさっている一筋の肉の裂目を、しつこく上下に一差し指の先でなぞってやる。
「ふぁ……~~っ……!」
里香の口からかみ殺したような息が漏れる。同時に、僕も右手の指に違和感を感じた。里香の秘部を愛撫していた僕の右手が、粘着質のある湿り気を感じたのだ。
僕が愛撫を続けていく内に、やがてその愛液の湿り気は蜜の様に溢れ出し、恥毛と僕の指を淫らに、しっとりと濡らしていく。その間も僕の愛撫と里香の喘ぎ声は止まることは無かった。
「やぁんっ……はぁ……ぁぁっ!」
そして、それが熱を帯び、水音を放つようになるまで、さほど時間はかからない。
ちゅ……くちゅっ
里香の愛液が発した小さな水音が、二人の耳にはっきりと届き始めた。里香が昨日のように僕の行為でこんなに濡れている事が、僕のケモノじみた加虐心を再び呼び覚ます。
「ほら、里香?……ここさ、濡れてきてるよな?結構感じてるんだろ?」
そう言いながら、はっきりと里香に聞こえるように狭い蜜壷を掻き回し、粘り気のある水音を立ててやる。
ぐちゅっ……ねちゅっ……
「……ゆ、裕一のせいでしょっ……!」
「悪かったな。でもさ、……濡れてるってことはやっぱり気持ちいいんだろ?」
「ふ、ふざけないでよぉ……」
未だ強気な姿勢を完全には失わない里香を、僕は更に堕としてやりたかった。いっそ、僕と同じようなところまで、里香に堕ちてきて欲しかった。

「里香………まだわかんないのか?教えてやるよ……おまえはな。俺に犯されたくて、ここに来たんだよ」
僕はそんな自分の考えに、自分がますます穢れていくのが嫌だった。強く否定して欲しい。こんな穢れた僕を完全に否定して欲しい。
でも里香は、僕の放った言葉にやはり少しショックを受けていたようだった。
「……あたしはそんなこと……」
里香の顔がなんとも言えないような感情に紅く染まり、当惑しているように僕から目を逸らす。もしかして図星だったんだろうが?いやそんな事はありえない。あってはいけないんだ。里香は純粋で気高くて穢れちゃいけない存在で……それをした僕は、彼女にとって最も許してはいけない存在になっているんだ。
だから僕は今晩も一方的に里香を犯している。決して立ち入れない聖域を暴力で汚している。そうであるはずなんだ。
……僕はとにかく、だいぶ出来上がってきた里香を前戯で一度達せさせる為に、里香の秘部に顔を遠慮無しに近づけていった。
むんわりとした女の子の濃厚な匂いが、慣れていない僕の鼻にはきつかった。里香は僕の行動が予想外のものに変わったのに気付いて、必死に拒もうとする。
「ちょ、ちょっとそこは……!」
しかし里香の腕の力では僕の動きを止められず、拒否するその声も直ぐに未知の感覚に震える嬌声に変わってしまう。僕が里香の秘部に舌を這わせたからだ。
ぴちゃっ……
「やだ……そんなとこ舐めるなんてっ……」
僕だってそんなに知識があるわけじゃないけど、永く病院暮らしだった里香にはもっと知識がないはずだから、余計に驚いたと思う。
僕は執拗に舌の先を使って吸い出し、艶めかしい里香の蜜の味を存分に堪能する。
ぴちゅっ……ちゃっ……くちゅっ……
「ゆういちぃ…や、やめてぇ……っ……」
僕の舌が激しく秘部を舐め、そこから愛液の水音が立つ度に、里香は形だけ否定している甘い声をあげる。形だけだ。さっきから溢れてくる愛液の量が増しているのが分かる。
ぺちゃっ……ぴちゃぴちゃっ……!
「ふあぁっ……!? ……き……たないからぁっ……なめないでっ……!」
そんな里香の弱々しい反応に僕は更に興奮して、里香の両胸の乳首をクイッと摘み上げてやる。
「いいッ!? ……む、むねもぉ……」
里香は反抗する気力をほとんど失ってしまったようで、
ただ、とろんとした表情のまま僕の愛撫に声を上げ、身体を震わせて、目を瞑るだけだ。また両乳首を人差し指とクイッと摘み上げて、悪戯にグリグリと遊んでやる。
「ひぁっ!……い、いたっ……」
その間も、僕の舌は里香の秘部を責め続けた。
ぴちゃっ……ぴちゃっ……
僕はとどめのつもりで、更に顔を里香の秘部に埋めた。
口全体を里香の吸い付けた上に、里香の幼いながらも自己主張している肉芽と溢れ出す愛液を一気に吸い取るようにしてやった。
ずずずずっ………!
僕の口が里香の愛液を吸い出す音が、薄暗い病室に響く。そして里香が身体全体を細かく震わせて強張り、達した。
「ひぃ……! やぁっ…あ、あ……! ふああああぁぁっ……!!!!」
力が大分抜けた身体が、ベッドの上で更に無防備になる。
その後、里香は半ば放心状態になってしまって、少し上がった息を整えていた。
……もう少しすれば、里香は僕に愛想を尽かしきってくれるだろう。息を整える里香の口から、僕への言葉が漏れる。
「はぁ……はぁ………す、吸うなんてひどいよぉ……」
僕はその里香の反応に満足して、事を先に進めることにした―――――

――――僕のベッドに仰向けに横たわっている里香の、上半身のパジャマを僕は両手で掴んだ。
パジャマのボタンを乱暴に外して、簡素なブラジャーもずり上げる。
すると、ブラジャーの下から里香の小さい双丘が現れた。
赤くツンと勃起した二つの乳首が、僕に散々弄られた事を物語っている。次に僕はいきり立つ自分自身を抑えながら、里香の身体をひっくり返してやった。
里香の華奢過ぎるほど細い身体が、真っ白なベッドの上でうつぶせになる。その少し強引な動きのせいで、里香の口から、意識を伴わない小さな喘ぎ声が漏れた。
「ぁ……?」
僕が少し落ち着いて里香を見ると、前のボタンが全部外されブラジャーがずり上げられ、下のパジャマとショーツも膝の少し上までずり下げられていた。
そんな里香の中途半端なパジャマの乱れ方が妙に色っぽくてもの悲しかった。
なぜなら、それらは僕の手で乱暴にずり上げられたり下げられたりして出来たものだからだ。
けれど、僕はそんな事でこの行為を止められず、うつぶせの里香の身体を四つん這いにして、普段僕が使う枕に里香の頭を押しつけ、犬の交尾のようなバックの姿勢をとった。
ケモノの様な体位は僕に結構相応しいだろうと思うと、自嘲的な笑みがこぼれた。枕に突っ伏した形になった里香の顔が横を向いていて、
僕の顔があまり見えないのが救いに思える。
そして僕は里香の腰の辺りを掴んで高く上げた。すると、里香が含んでいる意味のわからない、微かな呼びかけを僕にした。
「ゆう……いち……」
ごめん、里香。
僕はすっかりギンギンに勃起した自分のペニスを取り出して、里香の濡れそぼった、そしてもう『女』になっている、火照りきった秘裂にあてがった。
処女は――大切な初めては、昨日僕が力ずくで奪ってしまった……。
……亀頭が割れ目にピットリと合うと、里香の身体が強張る。
しかし、抵抗する力も気力も無いのか、無防備な里香は僕から逃れようとはしなかった。
僕は少し力を込めて里香の腰を両手で持ち、腰を前に落とす。
ズプッ……!
「ひあっ……!」
僕の亀頭が、里香のまだ初々しい割れ目に飲み込まれていく。
さっき里香が達している事もあって、挿入した途端に温かい肉襞に出迎えられた。
ズッ……ズッ……ズッ……
僕が何度か腰を落とすと、その度に里香の細い身体と肉襞が震えた。
でも里香自身の口からは、『痛い!』とも『もっと優しくしてよ!』という言葉も出ない。
ただ……ただ……力ない喘ぎ声が漏れるだけだ。……こんなにも無抵抗な女の子が、あんなにワガママだった里香なのか?それとも、身体の調子が悪いから僕にされるがままなのか?湧いてくるそんな疑念を払いつつも、僕は自分のペニスを里香の奥深くまで沈める事が出来た。
温かくて気持ちいい胎内の感触が、僕の背徳感を煽る。
……本当ならこのあたりで僕は里香の許しを得てから腰を動かすのだろうけど、『許し』なんてものはそもそも、どこからももらっていなかった。だから逆に僕は、あまり遠慮はしないで里香の中で動き始めた。
「ああぅっ……」
僕のペニスが入ってきたのに反応して里香が声を上げた。
ズイッ……
腰を引くと、絡み付いてくる肉襞にペニスが扱かれる。浅めに突くと、温かい圧迫感が心地よかった。里香は繋がっている僕にされるがまま、半脱ぎの乱れた着衣を纏う身体を前後に揺らす。あの里香と、僕はまた繋がっている。
あまりの気持ち良さと、この行為がもっと普通な形で成立していればどんなに良かったかという、後悔に近い感情が僕の心を痛めつけた。
僕のベッドが一連の動きでキシキシと揺れる音が僕の耳に届くと、僕はその音の、乾いたもの悲しい響きよりも大きな快感を求めて更に腰を振っていった。
四つん這いの里香を、病院のベッドの上で後ろから犬のように犯す僕。
なんてどうしようもないヤツなんだろう……?
僕は単調になりすぎる動きをやめて、浅い突きの中に深い突きを混ぜるようにしてやる。
ぐちゅっぐちゅっ……ずちゅっ!
そんな時でも里香の胎内は律儀に反応して僕に快感を与えてくれた。
「……あっ……あっ……ひあっ――!」
深い突き方だと里香の口から大きな声が漏れて、昂ぶっていっているのがよくわかった。結合部から漏れる水音が、いつの間にか淫らなBGMになっていた。
浅い入り口の辺りだけを、亀頭を使って擦ってやっても里香は悦んだ。
「ふぁぁ……そ、そこは…………やっ!」
けれど、悦んでいるというのは僕の勝手な思いこみで、里香は本当は僕を殺したいほど憎んでいるのかも知れなかった。
でも……それでもいいんだ。その方がいい。
ぐちゅっずちゅっ!
僕の手に力がこもり、腰の振りと合わせて里香の高い腰を掴んで引き寄せる。そして温かい肉襞の中をペニスで掻き回す。
「ふあぁ!……っ!」
相乗効果で里香の胎内がゴリゴリと僕の亀頭で抉られ、里香と僕は再び絶頂に追いやられていく。そして僕は里香の両胸をバックの姿勢のまま掴み、ぎゅっぎゅっと揉みしだく。
コリコリになった両乳首を指で押しつぶしながら、その感触を愉しんだ。
「む、むねはやめてよぉっ……」
すると里香が、力なく声を上げながら自分から腰を振り始めた。
自分の腰の動きに、更に里香の腰の動きが追加されて、僕のペニスは右左に形を変えられ、扱かれてしまった。
里香は今更僕から逃げようとしたのかも知れないけど、僕はそれを利用して、里香の高く上げられた腰を思いっきり突き上げてやった。
ゴツッと、里香の最奥が亀頭に当てられる。
「あっ――――!!!!」
里香の身体がカクカクっと少し震えて、また脱力してしまった。
快感に必死に耐えているのか必死に力を込めると、僕のペニスがぎゅっと里香の中に締め付けられた。
その最中にも、高く上げた腰をなおも突かれ続けている里香は汗ばみ、昂ぶっていく。
「ひやっ……ひぁ!……っ……!
 ゆういちぃ……あたしぃ、……も、う……!!」

僕の亀頭が容赦なく里香の奥を抉りはじめ、里香を責め立て続ける。僕の息もかなり上がり始めてきて、射精の予兆がかなり高まってきた。僕はもうこれ以上耐えきれないと思って目一杯腰を振り、里香の最奥をもう一度突いて、そして達した。
「里香っ!こ、このまま……!」
「えっ?な、なに……やっ!おねがい、いま膣中は、だ……っ!?」
押し殺したような声が僕の口から漏れるとすぐに、凶暴な真っ白い快感が、里香の胎内に欲望を注ぎ込む背徳感と共に、勢いよく僕の腰から頭を、あっという間に侵していった。視界が歪んで、腰が抜けそうになる。
ドクドクドクッ………
そして、僕の熱い精液がそれ以上に熱い里香の中に放たれると、里香も高い高い絶頂に無理矢理投げ出されてしまった。細い身体が、つやつやとした長い髪が絶頂の衝撃でビクビクと震える。里香の理性を失った声が、いやらしく病室に響いた。
「……ひゃ、ゃあああぁぁっ~~っ~~!!…………やぁ……たくさん……でてるよ……」
里香が達した事で彼女の意思に関係なく、熱い胎内がきゅっきゅっと僕のペニスを絞り上げて、一滴でも多く精液を搾り取ろうとする。
トクッ……トクゥッ……
僕もそれに応じて一滴残らず里香の中に出した。
―――里香が妊娠しないとは限らないのに。
しかし、そんな快感も背徳感も達してから一秒一秒経つ事に薄れた。代わりに僕を襲ったのは、心と体の疲れだ。
「ああっ……ふぁ……あ、あついよぉ………」
あっという間に終わったお互いの絶頂の後で、里香は乱れた衣服で四つん這いのまま、まだピクピクと全身を震わせていた。
……罪悪感と余韻で放心状態の僕は、里香の中からペニスを出さなくてはいけないとやっと考えつき、力が抜けた腰を後ろに引き、やっとの事で里香の中からペニスを引き抜いた。
ズルッ――ニュッ……
「ぁっ……!……はぁ……はぁ……」
僕がバックの里香からペニスを引き抜くと、里香はその感覚にまた身体を震わせた。
僕のペニスが引き抜かれた里香の秘裂をふと見ると、愛液と精液の混ざり物がトロッと零れ落ち、今まで気にならなかった僕と里香の生々しい匂いが鼻を突き始めた。
里香はすっかり力が抜けて僕のベッドを仰向けに占領する。
それを見た僕の身体からも、急激に力が抜けていって……――――

――――気が付くと、一緒のベッドの上で里香が僕のことを見ていた。ぼんやりとした頭の中に、目の前の里香の声が響いてくる。
里香は僕の直ぐ隣で寝ていた。
「……裕一、やっと起きたね」
感覚が戻ってくると僕は頬に痛みを感じて、おぼろげな意識のまま手をやると、人肌の暖かみのある柔らかいものを感じた。
里香が僕の頬を抓っていて、その手に僕の手が触れたのだ。
僕はその瞬間に、頭の中の眠気が窓のカーテンを開けるようにサッと無くなるのを感じた。
今の時間と状況の把握が僕の頭の中で、数秒間で一気に生々しく行われる。
夜遅い時間。
月も出ていない夜空。
薄暗くて静かな、つまらない僕の病室。
シワだらけの布団とベッド。
その上に寝ている僕と、里香。
そして、僕が里香にさっき何をしていたか。
「……里香? どうして……」
僕が問いかけると、里香は悪びれずに言う。里香特有のいつもの強気な口調のおかげか、里香と話しても僕はほとんど慌てずに済んだ。
「だって裕一の事なんだから、こうでもしなきゃ起きないでしょ?」
里香は僕が乱した衣類を整えて、もうすっかり落ち着いているようだった。
あんな所やそんな所もちゃんと綺麗にしているんだろう。
……どうやらあの行為の後、ドッと溜まった疲れのせいで僕は眠ってしまい、そんな僕を隣にいた里香が抓って起こしたらしかった。
だいたいの事情がわかった僕に、里香は全く普通に話し続ける。
「裕一、結構気持ちよさそうに寝てたよ。私にまたあんな事しといてさ……」
里香は、こんなに穢い僕から逃げていかなかったんだ。僕は、その事が未だに信じ切れずに里香を疑う。
後で嘘とわかる位なら、今里香に聞いておきたかった。
色が濃くて吸い込まれそうな里香の瞳を見つめながら、僕は自分自身の罪を確かめるように、思い切って里香に問いかけた。
声がだいぶ震えている。
もう忘れたはずの、美紗子さんのブラジャーの花びらが、一瞬脳裏にちらついた。
「……里香……また俺に何かされると思わなかったのか?……これに懲りたらもう……俺には……」
最後の一文は、ほとんどかき消えて里香には聞こえなかったと思う。けれど、必死に紡ぎ出した僕の言葉も里香はあっさりと流してしまった。
ただ、その双眸が少しだけ潤んでいたような気がする。
「……思ってたよ、私。……昨日の夜の裕一変だったから、何かまたされるんじゃないかって思ってたよ」
「里香……?」
「それでも、会っておきたかったの。だから、会いたかったの」
里香は、なおも僕に話し続けた。
「裕一に会って、自分で話したかったの。あのままで別れたくなかったから。もう………谷崎さんから聞いてるかも知れないけど……」
何なんだよ、別れたくないって?
考えがついていかない……
谷崎さんから聞いてるかも知れないって?
里香……なんなんだよ。
「…………」
「―――私ね、手術受けることにしたの」
里香からその言葉を聞いた瞬間、僕は目の前の里香の目を見ていられなくなった。手術の成功という希望を上回る、生き物の全てに定められた死という恐怖。
手の中の宝石が滑り落ちて砕ける瞬間の、痛々しさ。それに直面した時に訪れるだろう自分の心の痛みが、たまらなくイヤだった。
………里香の発作が起きた時のことも鮮やかに思いだしてしまった。
倒れた里香の身体の重さと力なさ、里香の血の気のない顔の色、僕一人では里香を運べなかったから、里香を薄汚れたコンクリの床の上に置いていった事。
今更、彼女が一生死ぬまで背負っているモノの重さと、その境遇に何も考えずちょっかいを出した僕の愚かしさに死にたくなった。今日はずっと病室にいたから、その手術について亜希子さんや夏目から何も聞いていないけれど分の悪い賭けだろうという事は、浅はかな僕でも理解できた。
二人で生きていける希望よりも、絶望があまりに巨大に見えた。
冷や汗が垂れてきて、意識が凍り付いていく。
首が垂れて、下の白い布団が眼前に広がった。
「…………」
「ゆういち?……だ、大丈夫……?」
力なくうつむいた僕を、里香は少し驚いて見つめていたみたいだった。
そして僕は何も考えずに白い布団を見ていた。途方にくれていた。
ただ、里香と出会って下僕生活を始めてから心に刻まれて来たものを。
今日までの僕と里香の短くて掛け替えのない歴史を、目の前に広がる白い布団の海に攫われないように、必死に噛みしめていた。

里香を失いたくない。いなくならないでほしい。

急に里香の声が聞こえた。
「……裕一は強姦魔だけど、これでおあいこにしよ?」
その声が聞こえたすぐ後僕の身体は後ろに押し倒されて、唇は里香に塞がれた。里香の体重と身体の匂いも、落ち着いて心地よかった。
今まで散々近くにいたのに、里香の身体はこんなに愛おしいとは思わなかった。強姦魔もいう単語も気にならない位、気持ちよい。ひどく優しくて丁寧な里香の唇と舌の動きが、僕の心をほぐしていってくれた。
余計に情けない話しだけど、僕はその里香のキスに世間で言うところの母性のような純粋ささえも感じた。愛する相手に送られる、無償のまごころ。
そんな時間の間だけかも知れないけど、僕は里香の一緒にいるという事が確認できた。

そして里香の方が名残惜しそうにその唇を離すと、僕は里香に向かって口を開いていた。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
里香はとても気恥ずかしそうに、少し視線を逸らしながらこう続けた。
「……裕一、私に散々いじめられたもんね。色んな事ひっくるめてこれでおあいこにしよ?さっきの事だって私、裕一の事挑発したし。昨日の仕返し」
「挑発?」
里香の挑発という言い回しが、どうも僕は少し気になった。挑発という言葉が指している意味は、里香が僕の部屋に来た事だろう。
「うん。裕一が私にまた何かするかも知れないと思ったけど、やっぱり裕一ったらおかしいの。………あんなに元気無かったのに、『ああいう事』してると人が変わるんだもん」
里香の言葉に僕は、今度は一気にカアッと顔が火照るのを感じた。かなしいかな、次の瞬間には自分の行為を正当化する発言をしていた。
「ちょ、里香! あ、あんなに自分だって攻められまくってた癖に……」
明るくなった雰囲気が嬉しかったのかどうか、里香も乗ってくる。
僕を元気付けてくれる強気な光が、再び里香の双眸に宿った。
そして、得意げな口調で僕を論破し始める。
「ふ~~ん、そっか……確かにそれも一理あるけど……でもよく発端から考えたら、裕一は一方的な加害者なわけよね」
ほぼ正論なのだから僕は途端に口ごもってしまう。
「そ、それは……」
「私に何をしたか、忘れたわけじゃないよね?」
「う……」
僕はそう痛いところを突かれては反論する材料を失い、ただ黙っているしか出来ない。
里香はというと実に楽しそうな顔で、どうやら僕に対する仕返しの方法を考えているようだ。
一体どんな事をさらなる仕返しとして要求されるのかと考えると、本当に怖かった。
なにせ、相手はあの里香なのだから。
「そうだ!」
僕が里香の出方を待っていると里香はこれは名案だというように、僕の目を見据えて、優越感を味わうように勿体ぶって口を開いた。
「―――私に酷いことをした戎崎裕一はその謝罪の証として、私が手術を受けた後、誰に邪魔されても真っ先に面会に来ること」
その里香の言葉を聞いて、僕は目の前の里香に何も考えずに甘えるように抱きついていた。すっぽり腕の中に収まってしまう細い身体を、里香の儚げな存在を少しでも近くで感じたかった。
「里香……!!!」
里香が手術を成功させた未来の事を考えていて、生きようとしていることが嬉しかった。
色々なモノに押さえつけられていた感情が自然と溢れ出し、僕の目から涙がにじんできた。
すると、僕の目から垂れた涙を里香がスッと白い手で拭ってくれた。
「裕一……好きだよ……」
そう呟きながら里香も僕の身体を抱きしめてくれた。
里香のつやつやとした髪の毛が纏ったシャンプーの匂いが優しかった―――
―――今晩はもう少し里香と一緒にいて、それから里香を病室に送って行こう。
僕はしっかりと里香の背中と肩を支えて、二人っきりで暗い病院の廊下を歩いていくんだ。
里香の手術が終わってからも、僕はずっとそうする。
今晩は半分の月が出る夜じゃないけれど、待っていればその内のぼるはずだ。
その半分の月を、僕はまた里香と一緒に見るんだ―――

終わり

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感動するエロさですね。里香はココロがひろいなー。

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